2018年IR実施法(いわゆるカジノ法案)の過程と最新情報

IR実施法(いわゆるカジノ法案)の最新情報をおいかけています。

2018/7/20カジノ法案可決成立

2018年7月20日に、衆院本会議においてカジノ法が賛成多数で可決し、公式に成立しました。カジノ法は正式にはIR推進法(IR実施法)という法律で、2013年に最初の法案が国会に提出され、各党が検討を重ねた結果、2018年に入ってようやく公式に成立したという流れとなります。

最初の法案が提出された際には、2020年に開催される東京オリンピックに向けて国家の収入増収を狙うという目的がありましたが、成立するまでに時間がかかってしまったため、2020年のオリンピック開催時期までには間に合わない可能性が高くなっています。しかし成立したカジノ法案によって国内に大型のカジノ施設が誕生することが期待されていて、カジノ収入による観光振興は確実と言われているのです。具体的にいつ頃にカジノ施設が開業するのかという点についてはまだはっきり時期が決められているわけではなく、東京オリンピックが開催された後の2022年あたりではと考えられています。

国会でIR実施法が成立するまでには、各党から様々な懸念や意見が提出され話し合いがもたれてきたわけですが、懸念の一つに刑法との共存問題がありました。日本の刑法ではカジノをはじめとする賭博が禁止されており、賭博行為を行うことは刑法に反する行為となってしまいます。しかしIR実施法が成立してカジノが公に認められると、刑法のこの部分と相反してしまうわけです。そのため、2018年に成立したIR実施法では、大型のカジノ施設は民間企業が全国どこにでも自由に建設して良いというわけではなく、国内に3か所のみ建設が計画されることになりました。この3か所が具体的にどこになるかはまだ決定していませんが、北海道の札幌や名古屋、横浜、長崎など多くの都市が名乗りを上げていて、今後絞られて最終的な3か所が決定することになるでしょう。

各政党の賛成反対の立場

IR実施法の成立に際しては、各党によって意見が分かれました。法案に対して賛成の立場だったのは、自民党と公明党で形成されている与党と、野党の日本維新の会でした。他の野党は反対票を投じたわけですが、賛成多数ということで法案が可決されました。

IR実施法って結局どういうこと?

IR実施法とは、国内にカジノ施設を建設し、カジノで遊べる施設以外にも劇場や国際会議場、宿泊施設などを併設して大型の観光施設を作ろうという法案です。カジノは刑法によって禁止される行為ですが、IR実施法が成立したことによって、国内で3か所までカジノ施設の運営が許可されることになります。こうした施設を作ることは、国内からの旅行客が増えて地域振興にプラスの影響を与えることが期待されていますし、海外からの観光客が増えるきっかけになると予想されています。

その中でカジノに関する内容とは

カジノ施設には、様々な賭博設備があり、スロットマシンやルーレットをはじめ、利用者が好きな機種を選んでお金をかけて遊ぶことができます。IR実施法では、具体的に施設の中にどんな機種の設置が認められるかという細かい点まではまだ決められておらず、ザックリとした大枠のみが決定したわけですが、今後もしかしたらどんな機種の設置はOKでどの機種はNGというルールが決められる可能性はあるでしょう。

海外にはカジノ施設があらゆるところにありますが、今回IR実施法で成立したIR実施法では、海外と全く同じルールでカジノ施設に入って遊べるというわけではなく、一定の規制が設けられることになります。例えば、施設に入場する際には日本国内で生活している人は入場料として6000円がかかる有料施設という扱いになるとか、いつでも自由に出入りできるわけではなく、28日間というスパンで最高10回までしか入場できないなどの制限が設けられることになります。こうした制限については賛否両論がありますが、今後運営がより現実的なものになるにつれて、さらに細かいルールや規制が設定されることになるでしょう。

ギャンブル依存症対策はどうなった?

IR実施法の成立は、現在国民の多くが抱えているギャンブル依存症についての対策も講じる必要があります。現在日本にはカジノができる施設はありませんが、賭博には該当しないパチンコ施設は全国にたくさんありますし、競馬や競輪、競艇などお金をかけてギャンブルのようなスリルや快感を味わえる娯楽が複数あります。そして、そうした娯楽にハマり過ぎると依存症になってしまうことも分かっていて、ギャンブル依存症で悩んでいる人もたくさんいるのです。

IR実施法が成立してカジノ施設が建設されると、当然ですがギャンブルが好きな人は興味や関心を持つから足を運ぶでしょうし、それが依存症を悪化させてしまう要因になるのではないかという点が懸念されています。また、現在は特に依存症を抱えていなくても、楽しいカジノ施設で依存症になってしまうリスクはゼロではありませんから、そうした点についても早急な対策が必要となるでしょう。

パチンコパチスロに関しての議論は?

現在日本ではカジノをはじめとする賭博は刑法によって禁止されています。「それならパチンコやパチスロはどうしてOKなの?」という人は多いのですが、パチンコやパチスロは賭博に分類されているわけではなく、娯楽というカテゴリーに分類されるため、現在の刑法では違法な行為には当たりません。また、IR実施法が成立したことによっても影響を受ける事はなく、パチンコパチスロ業界は現状維持することができそうです。

パチンコは日本国内においては10兆円を超える巨大産業で、カジノ施設が建設されることによって施設周辺のパチンコ店は影響を受ける可能性はありますが、パチンコ業界全体を見れば、IR実施法によって受けるマイナスの影響はほとんどないと考えられています。パチンコは日本においては歴史が古く、1995年あたりがパチンコ人口のピークを迎えましたが、その後も固定客を抱えているため、業界自体は安定した収益を得ています。

マイナスの影響を受けないと考えられているパチンコ業界ですが、もしかしたらIR実施法の成立を受けて、パチンコ店もリゾート施設開発に乗り出すという可能性はないとは言えません。宿泊施設や劇場などを併用した巨大施設を作ることは、カジノ施設だとIR実施法によって国内で3か所までに限定されますが、パチンコパチスロはカジノではないため、全国どこにでも建設可能です。そのため、もしかしたらIR実施法の成立によって、今後のパチンコ業界のトレンドや形態が少しずつ変わってくる可能性が考えられます。

パチンコ規制の未来とは

パチンコは賭博ではなく娯楽であるという考え方が、日本国内の主にお上には根付いています。IR実施法の成立によってもそのスタンスは変わりませんし、国内カジノ施設のロケーションが限定されている間は、少なくてもパチンコ業界にマイナスの影響が出ることはないと考えられています。もしかしたら将来的にはパチンコも含めて規制が作られる可能性はありますが、賭博とパチンコは完全に別物だと考えたほうが良さそうです。

IR実施法成立で今後の官民の動きはどうなる

IR実施法の成立に先立って、官民データ活用推進基本法が成立したことはご存知でしょうか?現在では、国や自治体、民間企業がそれぞれに個人情報を管理保管していて、お互いに共有することはありませんが、官民データ活用推進基本法が成立したことによって、互いにデータを効率的に活用できるようになりました。

2016年に成立したこの法律は、現在では人工知能やIoT(Internet of Things)、クラウドコンピューティングなどにも活用されています。今後はIR実施法が成立したことによって、依存症を抱えている人の情報を管理したり、どの施設に誰が何回入場したのかなどの情報が瞬時に分かるようなネットワークが構築されるなどの方法に用いられることが計画されています。官民が別々に情報を管理しても大きな問題が起こらなかった時代はすでに終わり、これからは官民が協力しながら情報管理や情報提供をする必要がある時代が到来したと言えるのではないでしょうか。

場所はどこになりそう?誘致を目指す自治体とは

カジノ施設が建設されると、そこには国内からだけではなく海外からの来客も見込めるため、自治体にとっては大きな財政源になることは間違いありません。そのため、20もの自治体が名乗りを上げていますが、2018年現在では東京都のお台場や千葉県、神奈川県に大阪府、また和歌山県に長崎県の7都道府県が国内3か所に限定されるカジノ施設建設地域として有力候補と言われています。

国内で3か所に限定するという案は、IR実施法が成立した直後だけの予定で、まずは2か所から3か所で試験的に運営を行い、課題や問題点を見つけて評価改善しながら、段階的に今後は10か所程度に増やすという見込みとなっています。そのため、現在名乗りを上げている20の自治体にとっては、初期ステージでの建設は難しくても、その後段階的な建設認可によって建設が可能になることも期待できそうです。

たくさんの自治体の中から、どんな基準でロケーションが選定されるのか、気になるところです。海外のカジノ施設建設では、政治的な思惑にとらわれることなくできるだけ公正な選定を行うために、中立的な立場から公募によって選ばれた専門家が選定するというケースが少なくありません。例えば都市計画とか都市再生に関する有識者やカジノ施設に関する専門家など、複数の専門分野における権力者が集まって公正に選ぶという方法が理想的と言えるでしょう。

経済、雇用、地域への期待

IR実施法の成立によって国内3か所にカジノ施設が建設されることは、地域住民にとってはたくさんのプラスの影響がある一方で、マイナスの影響も懸念しなければいけません。例えば経済効果は大きなプラスが期待できるファクターです。カジノ施設は劇場や宿泊施設、ショッピングセンターやレストランゾーンなどを伴う巨大なエンターテイメント施設となるため、国内外からたくさんの来客が足を運ぶことが期待されています。こうした施設では雇用が必要となるため、地域の雇用活性化にもつながるでしょう。また、多くの人が外部から転入することで地域の活性化も期待できそうです。

一方で、ギャンブル依存や犯罪の増加については、地域の理解が必要不可欠となります。国だけではなく自治体ごとにこうしたマイナスの影響に対する政策が必要となりますし、犯罪抑止に向けた地域住民の協力も求められることになるでしょう。

運営会社やディーラー等人材育成について

IR実施法が成立したら、次に選定されるのは国内でどの自治体にカジノ施設が建設されるかというIR区域が選定されることになります。その後に事業者が選定されたり運営会社が決まることになりますが、実はIR実施法が成立する何年も前から、もしも成立したら有力と言われている運営会社や注目される企業があることはご存知ですか?

巨大施設を運営する企業に求められることは、資金調達力と過去の実績です。施設の規模が巨大になるため、どうしても運営会社も名実ともに高い大企業が有力なのではないかと考えられています。海外のカジノ施設は、カジノだけという所がたくさんありますが、日本に建設される施設はカジノだけではなく企業のイベントやコンサートが開催できるエリアなどを含む総合リゾート地として機能することになります。そのため、そうした総合リゾート開発を手掛けて成功を収めている企業に運営が任されることになるでしょう。

また、IR実施法の成立を見越してカジノで活躍するディーラーなどの人材育成を行う専門学校や養成学校が、全国各地に数年前から開校されています。例えば九州の福岡には、日本カジノ学院という初めてのカジノディーラー育成学院が誕生し、将来ディーラーとして活躍したい人に大人気です。国内でカジノ施設がオープンする暁には、こうした養成所を卒業した人材が雇用されるチャンスが期待されています。また、今後はこうしたIR区域にさらにディーラー育成養成学校などの人材育成スクールが作られる可能性もあるため、地域活性化にとっては大きなプラスの役割りを果たしてくれるでしょう。

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